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訪問看護ステーション境、管理者の紹介動画
めぐ訪問看護ステーションの管理者である「五十嵐さん」の紹介ビデオを制作しました。
5分30秒ほどの動画になります。お時間ある方はご覧になってください。
また動画の下にテキスト文を掲載しています。動画が見れない方はそちらをお読みください。
『命の輝き』 ~めぐ訪問看護ステーション境 管理者 五十嵐美和~
命の輝きというものは、どこで体験できるのだろう。
例えばWBCで優勝した日本代表選手たち。
監督、コーチなどの関係者や、夢をのせて応援した日本中のファンも輝ける瞬間を体験できたのではないだろうか。日の当たるステージでの活躍や応援とは対極にあるかもしれないが、訪問看護という現場がある。そう遠くない時期に臨終を迎えるであろう最晩年を生きる人たち
そしてその最期に寄り添う看護士たちも、命の輝きを体験することであるのだろうか。めぐ訪問看護ステーション境の管理者五十嵐さんはこんなことを伝えてくれた。
「寝たきりで食事も一人ではできなくなってきている厳しい病状の患者さんが、自ら髭を剃って身だしなみを整えて、私たちを待ってくださっているんです。私たちのために残された僅かな時間と力を使っている。だから、私たちはどんなに厳しくても行くんです。この仕事で人間の尊さというか命の輝きというものを感じられることのひとつだと思います」
五十嵐さんは看護学校を出た21歳の時から特殊な部署に配属された。NICU、新生児集中治療室。500グラムにも満たない新生児の命の現場だった。
子供好きだった五十嵐さんは小児科を希望していたのだが新生児集中治療室は想像を超えている世界だった。
「怖かったです。毎日現場に行くのがあまりにも辛かった」
生まれたばかりの子を産婦人科から救急車で新生児集中治療室に搬送する。どんなに高度な医療を受けても死が避けられないこともある。
描いていた未来を失ってしまう夫婦に残された時間をどう過ごしたいかを問わなければならない。生まれて初めて母親に抱かれたときがその子の最期になるのだ。生涯忘れることのできない言葉を聞いたことがある。
「この子をもう一度元に戻して欲しい…」
もちろん、命を繋ぎ止めて数年後に再会する子もたくさんいる。
なんらかの障害が多少残ることになっても、そこに命の輝きを感じずにはいられないという。
新生児集中治療室での厳しい命のやり取りや、辛い体験多くの気づきの中で与えられた感動は、
五十嵐さんを大きく成長させた。
「私自身も出産を経験したことで、五体満足で生まれてくることは本当は奇跡なんだと感じるようになりました」
17年という歳月を新生児集中治療室で過ごし、五十嵐さんはそこからさらに様々な看護の経験を重ね、現在はめぐ訪問看護ステーションで活躍している。
病院ではなくご自宅で最期を迎えたいという需要は大きくなっているが、自宅に伺って病状の判断などを対処することの責任は大きい。
患者さんの情報共有は立場に関係なく、どんな細かいことでも皆でシェアをする。責任者である五十嵐さんは、皆が経験してきた様々な能力を結集させ、変化を続けながら最良の看護を目指している。ひたすら看護に捧げた人生だった。
若かった頃は新生児集中治療室があまりにも日常生活の体温とはかけ離れた世界で、何度も辞めようと思ったが踏みとどまって懸命に闘ってきた。厳しい体験でしか得られない境地がある。命に寄り添うこと。
そこで生きている微かな命の輝きは、看護するひと、看護をうけるひとが互いに寄り添い、共鳴することによってのみなされるのではないだろうか。
「ありがとう」と言って手を握り翌日に亡くなっていく患者さんもいるのだという。
タイトな看護の現状だったから仕方ないのだが、五十嵐さんは自分の子供たちの授業参観や運動会などに顔を出すことはなかった。
子供たちにとって褒められた母親ではないと思っていたが、高校3年生の長女が看護士を目指すことを知った。
長女に看護の話をしたこともなければ勧めたこともない。長女は当たり前のように命に寄り添う母親の背中から、ずっと何かを感じとっていたのだろう。
驚きと同時にささやかな喜びを感じている。いかなる時代でも必要とされる聖職は、親から子へと受け継がれていく。
<おわり>